呉市立美術館
平成31年度 呉市立美術館コレクション展供崙本画の魅力」 8月31日(土)〜9月29日(日) | 近現代の美術作品を所蔵し特別展も開催|呉市立美術館

開館時間

●10時〜17時
(入館は16時30分まで)

休館日

●毎週火曜日
(火曜が祝日・振替休日の場合は、その翌日)
●年末・年始(12月29日〜1月3日)
※展示替え等で臨時に休館する場合があります
 
は休館日
 
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コレクション展供崙本画の魅力」 -花鳥画・山水画・物語絵などに見る近現代日本画の伝統と革新-

2019年8月31日(土)〜9月29日(日)

                                                                            

 日本画は、描画材料として、膠(にかわ、動物の骨や川から抽出した蛋白質)で溶いた岩絵具(鉱物を砕いた顔料)や、墨を主に用いる画法で、千数百年前に中国から伝えられました。中国絵画に学びながら、日本の風土、歴史、文化の中で、狩野派(漢画系)、土佐派(大和絵系)、円山・四条派(写生派)などの諸流派が形成され、表現力豊かな運筆や、陰影を昇華した清澄な色彩により、写意(外面の写実でなく本質の表現)を重んじる、精神性と装飾性に富む絵画世界が創出されました。
 ところで、「日本画」という言葉は、西洋絵画に対置する呼称として、明治以後に在来絵画の諸流派を統合して用いられるようになったものです。以来、新たな近代絵画としての道を歩み始めることになった日本画は、その伝統と特有の画材・技法に立脚しつつ、西洋の画法や美術思潮を取り入れながら、独自の表現が追求され、時代に即して変容と発展を遂げてきました。
 本展では、池田栄廣、奥田元宋、工藤甲人、児玉希望、後藤純男、小松均、谷口仙花、手島呉東、平山郁夫、船田玉樹、益井三重子、水谷愛子、森田曠平、山中雪人ほかによる、新収蔵作品を含む館蔵品40点余りにより、多彩な展開を遂げた近代日本画の魅力をお楽しみいただきます。
 あわせて、こうの史代『この世界の片隅に』マンガ原画から「第15回 19年9月」「第17回 19年10月」を併設展示いたします。

関連イベント

.錙璽ショップ「日本画を体験」
※要事前申込(申込は終了しました)

日本画は中国から伝来して以来、千数百年間にわたり、当初の素材や技法を受け継ぎながら、日本の風土・歴史・文化の中で、洗練され、発展した画法です。東洋画の伝統を継承する、世界的にも貴重な画法ですが、実際に日本画を描く機会は、油絵や水彩画などの西洋画法に比べて、多くはありません。そこで当館ではコレクション展供崙本画の魅力」(8月31日〜9月29日)の開催に当たり、下記のとおり日本画を描くワークショップを開催いたします。
ワークショップではサムホール判(22.7僉15.8僉砲遼(ま)紙(し)ボードに当館所蔵作品の模写を行います。関心はあるがチャンスがなかった、何となく敷居が高かった、でも、日本画をちょこっと体験してみたいという方々には特にお勧めです。‟ちょこっと体験コース“とはいえ、新進の若手日本画家を講師に迎え、日本画の本格的な画材・技法により、顔料を膠(にかわ)で溶くところから体験できます。ぜひこの機会にお気軽にご参加ください。

大庭孝文 講師
浅埜水貴 講師
講師:大庭孝文(広島市立大学非常勤助教、創画会会友)
   浅埜水貴(広島市立大学実習補助員、日本美術院院友)
日時:9月16日(月・祝)13:00〜16:00
定員:20名
参加費:1,000円
対象:高校生以上
会場:当館地下講座室
申込方法:下記の申込専用フォームまたはお電話(0823-25-2007)で8月31日(土)までにお申込みください。申込多数の場合は抽選。

館長講座「直伝、日本画の楽しみ方」
※申込不要(終了しました)

当館館長が、日本画の一歩踏み込んだ楽しみ方を直伝します。

講師:横山勝彦(呉市立美術館館長)
日時:9月1日(日)13:30〜15:00
会場:当館地下講座室
定員:50名(先着順)

C甘学芸員によるギャラリートーク
※申込不要

日時:9月7日(土)、9月21日(土)各日14:00〜(各回40分程度) ※参加には展覧会のチケットが必要です。

展示構成

第1章 花鳥画

水谷愛子《臥龍梅》
日本画の主要なジャンルの一つに、花や鳥を始めとして様々な動植物を画題とする花鳥画があります。美しさばかりでなく、様々な願望に関連付けられた寓意が尊ばれました。例えば、花王と称される牡丹は富貴、常緑の松は不老長寿、滝を登る鯉は立身出世、番(つがい)の鴛鴦(おしどり)は結婚や家族繁栄への願いを象徴します。草木鳥獣を注視し、それぞれの対象が持つ生命力や特質を抽出することにより、こうした寓意は形成されてきました。
一木一草に神仏宿るという心持ち、生きとし生ける者たちを通して生命の本質、自然の摂理、神の真理に近づくことができるという自然観。このような道筋を経て描かれる花鳥画には、華麗さや装飾性にとどまらない深淵な世界があります。

水谷愛子《臥龍梅》1997年 紙本彩色 169.4僉214.6
水谷愛子(1924年〜2005年)は広島市出身。女子美術学校に学び、後に前田青邨らに師事。1949年に同郷の日本画家・山中雪人と結婚し、ともに日本画の造形性と構築性の向上を志した。日本美術院展で大観賞等受賞を重ね、2000年より同人となる。確かなデッサン力に裏付けられた大胆で生命力溢れる構図・線描・色彩により、対象の本質を表現した。寒気の中、春に先駆けて咲く梅は古来気高い花として描かれてきたが、本作では老梅に宿る強靭なエネルギーを、背景の強烈な色彩とともに表出している。

第二章 人物画

谷口仙花《レースのショール》
日本の伝統的な人物画と言えば、まず思い浮かぶのが、浮世絵の美人画や役者絵ではないでしょうか。これらは人物を写実的に描くのではなく、特徴をデフォルメしたり、時代の好みや理想を典型化したアイコンとして描いています。
一方、特定の個人を描く肖像画には、中世に行われた似絵(にせえ、本人を目の前にして似せて描く)や禅宗における頂相(ちんぞう、師弟の証として弟子へ付与される師の肖像)がありました。しかし、生前に似姿を描くことを忌み嫌う風潮があったとも言われ、多くは死後に描かれた遺像で、身分制の下で理想化された尊像が描かれるなどしました。写実的な肖像画が制約なく広く描かれるようになったのは江戸時代後期以降で、南画家・谷文晁(1763年-1840年)は、「形だけ追って似ていれば良しとするのではなく意(人柄)を写すことが大切」と説きました。
本章では、近代日本画の人物画における理想像と肖像の流れを辿ってみたいと思います。

谷口仙花《レースのショール》1938-55年頃 絹本彩色 145.9僉50.3僉
谷口仙花(1910年〜2001年)は年東京に生まれた。川端龍子に師事し、モダンで気品ある美人画を描いて一躍注目を浴びた。1944年に新進気鋭の日本画家・船田玉樹と結婚して夫の故郷である呉市に疎開。1953年まで夫の画塾で後進を育てるなど当地の美術の発展に貢献した。昭和前半期の世相の中、社会進出や自己主張を進める気丈な女性の生き様や内面を、装いや顔貌に反映させて生き生きと描いた。

第三章 山水画(風景画》

奥田元宋《晴曠》
山水画は山や水など自然の景を主要モチーフとする絵画です。東洋画の中心ジャンルで、人物画や花鳥画よりも高位に置かれました。実景の場合もありますが、心眼によって感得された理想郷「胸中山水」として多く描かれました。大自然への畏敬の念や、神仙が住むとされた聖なる山への憧憬がその根底にあるとされます。
中国・宋の時代に、知識階級が自らの精神を反映させる芸術表現として発展し、日本には禅宗とともに渡来しました。山水画の世界に、俗世間から逃避した隠棲生活を追体験して心身の救済としたり、また、峻厳な自然景に理想とする高潔な精神の在り方を重ね合わせたりしました。
近代以降に描かれた風景画に山水画の伝統と画中に表された心境を辿ってみましょう。

奥田元宋《晴曠》1958年 紙本彩色 155.5僉110.2
奥田元宋は現在の三次市に生まれる。中学時代から油彩画を始め、中学卒業後に上京して日本画家児玉希望に入門。児玉希望が主宰する画塾・日月社で実験的創作に励み、官展・日展で実績を積む。1984(昭和59)年文化勲章受章。戦後、日本画滅亡論に見舞われ、西洋画法を取り入れながらも日本画の伝統に立脚し、精神性の高い創作を行った。本作はフランス人画家・ボナールの影響を受けて制作されたが、作者はボナールを、近代西洋画の色彩と筆致で南画家・富岡鉄斎に通じる気韻生動(自然の崇高な生命感や律動感)を表現していると評している。


新収蔵作品紹介「日本画の伝統と革新」

船田玉樹《安芸の二級滝(青)》
船田玉樹《安芸の二級滝(青)》紙本彩色 91.1僉60.7僉‘鶺藏連作より
船田玉樹(1912年〜1991年)は現在の呉市広に生まれ、美術を志し上京。琳派に感銘を受けて油絵から日本画に転向し、速水御舟、小林古径に師事。院展に出品する傍ら現代美術運動に深く関わり、1938年に歴程美術協会を結成するなど日本画表現の前衛を追求した。戦後は呉・広島に腰を据え、創作の自由を求めて、1975年以後は無所属となる。伝統に立脚した革新的姿勢で精緻・端麗にして絢爛・豪胆、孤高にして独自の画境を創出した。二級峡を描いた連作12点は1961年の東京日本橋三越での個展に出品された作品が中心となっている。滝の流れと渦、その浸食作用で形成された峡谷の地形をほぼモノトーンで表現。クローズアップでトリミングされた変化に富む峡谷の姿はさながら抽象画の趣を呈するとともに、人知を超えた自然の造形が発する霊気が画面から滲む。

第四章 東洋画の伝統をつなぐ

鉱物を粉砕した岩絵具(いわえのぐ)を膠(にかわ)で溶いて描く日本画の技法は、もともと中国大陸から日本に伝えられた絵画技法です。以来、千数百年にわたって日本で守り伝えられてきましたが、中国では素材も技法も途絶し、現在日本でのみ行われる東洋の貴重な絵画技法です。
近年では日本に留学して日本画を学んだ中国人画家たちが故国中国で、岩絵具(中国では「岩彩」)製造技術を移入し、美術大学で岩彩画コースを開設するなど伝統の復活を進めているそうです。中国から日本へ、日本から中国へと伝統が引き継がれ、新たな芸術が創造され続けています。
ここでは、日本で日本画を学び、1996(平成8)年から2014(平成26)年まで芸術家招致事業を実施していた野呂山芸術村(呉市川尻町)に入村して創作活動を行った、中国人画家3名による作品をご紹介します。

第五章 仏教思想を背景に

後藤純男《春麗大和》
日本に仏教が伝来(538年)して以来、仏像彫刻を始めとして、寺院建築、仏教絵画、法具その他仏前を荘厳する工芸品など、仏教に由来する多くの美術品が作られ、日本美術の洗練と発展の原動力の一つとなってきました。
また、近代以降においては、人々を救済へと導く仏教の優れた教義が多くの芸術家に深い感銘を与えて、しばしば生涯のテーマとして追求され、釈迦や聖人の伝記、仏教の伝来ルートや旧跡などが描かれてきました。
平山郁夫は仏教が、「物質的な世界を超えたはるかな宇宙観、釈尊をはじめとする多くの求法者の人間的ドラマ、日本人の心の源流としての存在など、内容的に実に豊かな世界」を持っており、芸術創造の尽きせぬ源であることを語っています。
本章では仏教を源泉に生み出された作品をご紹介しています。

後藤純男《春麗大和》1993年 紙本彩色 112.0僉162.0
後藤純男(1930年〜2016年)は千葉県の真言宗の仏門に生まれる。僧侶と画家、双方の鍛錬を修めるが、画家の道を決意し、山本丘人らに師事。1952年に日本美術院展に初入選して以後、受賞を重ねた。1988年東京藝術大学教授就任、2016年日本芸術院賞・恩賜賞受賞。古寺をモチーフとする大和風物詩は「万物が仏像として光を放つ様を心象として捉えたい」と語る作者を象徴する作品群。細密な写実的描写ながら、仏画や経巻を思わせる紫紺と金の色彩効果により実景を越えて、光輝に満ちた宗教的な荘厳な世界に高められている。


第六章 物語絵の系譜

森田曠平《善知鳥》左隻
森田曠平《善知鳥》右隻
中国絵画では「詩書画三絶」と称して、画中に賛(詩や歌)が書き添えられるなど、画家の素養として詩・書・画の三つの分野に秀でていることが求められました。日本でも、平安時代に和歌の内容に沿って描かれる四季絵や、『源氏物語』に代表される物語絵が流行するなど、文学との深い関わりが東洋画の一つの特徴になっています。
さらには絵画の中に「隠し文字」として物語や歌の一部を書き込む「葦手絵(あしでえ)」や、物語や歌に詠まれる特徴的なモチーフを描くことで元となる物語や歌を連想させる「判じ絵」のような作品も描かれ、共有する文化的バックグラウンドを感じさせて連帯感を強めながら、作品をより深く楽しむ仕掛けともなりました。
本章では、物語と絵画の両面から想像を膨らませてお楽しみください。

森田曠平《善知鳥(うとう)》1980年 紙本彩色 四曲一双 各120.0僉231.2
森田曠平(1916年〜1994年)は京都市に生まれた。祖父・森田茂は浜口内閣の衆議院議長、第11代京都市長を歴任。始め黒田重太郎が主宰した関西美術院で油絵を、次いで日本美術院の小林柯白に日本画を学び、柯白没後は安田靫彦に師事した。日本美術院で受賞を重ね、同人となる。能を始めとする伝統的な文学や芸能に取材し、古典芸術の内に表出される美の世界に日本人としての真情を見出し、独自の画境を切り開いた。本作では能楽の『善知鳥(うとう)』と『今昔物語』を重ね合わせたストーリーを、濃厚な色彩表現で平安絵巻の如く描きだしている。